金沢で開催されているアートイベント「GO FOR KOGEI」。工芸や現代美術に触れながら街歩きを楽しむスタイルは、多くの方を惹きつけています。
今回は、車椅子ユーザーの目線から「実際にどれくらい安心して鑑賞できるのか」を確かめに行きました。
■ WHILLでの移動体験
利用したのは次世代型電動車椅子「WHILL」。

直感的な操作で、坂道や濡れた石畳でも安定して走行できます。車体は3ステップで解体できるため、移動や保管も容易。体力に自信のない方でも安心して街歩きを楽しめそうです。
■ アクセスと公共交通
金沢駅から東山エリアへは「金沢周遊バス」で約20分。
ドライバーさんがスロープを出してくれるので、車椅子での乗降もスムーズです。

混雑時は周囲の方の協力が必要になる場面もあり、 なりきり車椅子ユーザーとしての下見に少し申し訳ない気持ちもありましたが、現地のスタッフやドライバーの対応はとても温かく、安心感がありました。
■ 各会場のバリアフリー状況
- HATCHi 金沢 by THE SHARE HOTELS
受付会場で、やまなみ工房の作品を展示。段差はあるものの、作品は吊り展示で段差を上がらずに鑑賞可能。入口の展示は手が届く距離にあり、間近で楽しめます。

- SKLo(台湾料理レストランの四知堂を併設)
古民家を活用した趣ある会場。入り口に15cm程度の段差があり、電動車椅子ではスロープが必須。会場側は入場を制限しない方針ですが、抱え上げや板の設置などサポートが必要です。

- KAI
寺澤季恵さんのガラス作品を展示。入口に小さな段差、内部は砂利敷きがあり、電動車椅子では進みにくい箇所も。板を敷くなど工夫すれば鑑賞可能です。
- スタジオあ
段差はあるものの、スタッフが積極的に声をかけてサポート。桶で作られた茶室や工芸作品を間近に体験でき、期間中は実際にお茶を点てる催しも予定されています。
生憎の天候
受付を済ませたところで、空模様が急変。大雨のなか、コンビニで傘と雨合羽を買い、雨の街歩きへ。
WHILLの機動力は頼もしく、濡れた石畳やガタついた道も難なく進みます。
蓄音機博物館
SKLo近くでたまたま通りがかり気になったので立ち寄り。
エレベーター、多目的トイレ、車椅子貸出あり。
解説付きで昔ながらの蓄音機の音色を楽しめる場所で、雨宿りや休憩にも適しています。
休憩スポット
東山界隈には、バリアフリー対応のカフェや落ち着いた休憩所も点在しています。
展示を巡る合間に一息つける場所が多いのは、高齢の方や障害のある方にとって大きな安心材料です。
再び金沢駅までバス移動
帰路、浅野川大橋交番前のバス停は大混雑。車椅子では乗れないかもしれないと一瞬諦めかけましたが、ドライバーが声をかけ、あっという間にスペースができました。
そこで気づいたのは、テスト的に車椅子を使っていた自分たちが感じた「申し訳なさ」は、多くの車椅子ユーザーが日常的に抱いているものかもしれないということ。
けれど、周囲の人の温かい配慮や明るい対応があるからこそ、安心して旅を楽しめるのだと実感しました。
まとめ
今回の下見はあいにくの荒天でしたが、それでも金沢の街並みと工芸作品の魅力は十分に伝わってきました。
課題となる段差や砂利敷きは所々にありますが、現地スタッフの協力やちょっとした工夫で鑑賞可能な場所がほとんどです。
金沢は歴史ある家屋や工芸文化と、モダンなカフェやホテルが共存する街。アートを愛する高齢者や障害のある方にも、落ち着いて過ごしながら「GO FOR KOGEI」を楽しんでいただけると感じました。


